平日の昼間の電車に乗っている人たちは、目的地が一目でわからないからおもしろい
一目でわかるのは、みんなちょっと気が抜けていること
テカテカの革靴を履いている人や、凝ったヘアアレンジをしている人や、いかにも高級そうなバックを持った人はいない
スニーカーとゆるっとしたズボンのあいだに見える靴下はお座敷席を案内されたら慌てるような変な色だし、女の人は髪を下ろしているかポニーテールかお団子でヘアゴムも黒か茶色か紺、みんな軽くて安くて肌触りがまあまあ良さそうなバッグを持っている、何も持っていない人もいる
だいたいがひとりきりで乗ってきて、ふらっと席を立ってひとりきりで降りていく
午後の太陽が並んだ人々を順番に照らし、気が抜けていた人たちはみんな、太陽と闘うこともせず逃げることもせず、自分の番が終わるまで目を瞑ってゆっくりと耐えている
イヤホンもせず、スマホも見ず、外にも目を向けず、本も開かず、編み物もせず、眠りもしない
みんな何にもしていない
何にもしていない人々は、これからどこで何をするのだろう
平日の電車に乗る人はきっと、夜までにうちに帰って、最寄駅で買ったお惣菜を温めて、脚のマッサージもしないで寝そうな人たち
一番まっすぐ生きてる気がして、かなり羨ましい